東京高等裁判所 平成10年(行コ)78号 判決 1998年9月17日
横浜市港北区師岡町四七五番地の一
九〇四号
控訴人
長井滿
右訴訟代理人弁護士
金子正和
同
川口哲史
横浜市港北区大豆戸町五二八-五
被控訴人
神奈川税務署長 安島和夫
右指定代理人
竹村彰
同
赤池昭光
同
光吉正博
同
杦田喜逸
同
佐藤宣弘
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は控訴人の負担とする。
事実及び理由
第一当事者の求める裁判
一 控訴人
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が控訴人の平成六年分所得税について、平成七年六月三〇日付けでした、分離長期譲渡所得金額五〇四四万六五五八円、納付すべき税額一三三五万〇二〇〇円とする更正処分及び過少申告加算税賦課決定を取り消す。
3 訴訟費用は第一、二審を通じて被控訴人の負担とする。
二 被控訴人
主文同旨
第二事実
当事者の主張は、次のとおり付加、訂正するほか原判決事実及び理由欄第二(事案の概要)記載のとおりであるから、これを引用する。
一 原判決四頁九行目から一一行目にかけて「相続開始の日の翌日から、相続税の申告書の提出期限の翌日以後二年を経過した後にされたもので、」とあるのを「相続開始の日の翌日から相続税の申告書の提出期限の翌日以後二年を経過する日までの期間の経過した後にされたもので、」と訂正する。
二 原判決二〇頁九行目の「結果となる。」とある次に「本件のような場合、納税者である控訴人は、物納により納税する法律上の権利と措置法三九条一項の適用を受ける法律上の権利を有していたのであり、相続税法四一条と措置法三九条は互いに連携しながら納税者に物納する権利又は措置法三九条一項の適用を受ける権利を付与しているのであって、納税者である控訴人は、いずれかの方法によって納税義務を完了しうる(要するにそれ以上の租税負担をしない)法律上の権利者であった。ところが、本件の場合、控訴人は右のような選択的な法律上の権利をいずれも奪われている。」を付加する。
三 原判決三〇頁一行目の「それができない場合には、」とあるのを「これを本件土地についてみると、関東財務局横浜財務事務所がまとめたB五版用紙一枚の「管理又は処分をするのに不適当な理由」程度の判断をするについて、二年以上の期間を要した理由については全く不明であるし、被控訴人は何らの合理的な弁明をしない。この程度の判断に二年の期間を要したというのは明らかにかかりすぎであり、物納適格性審査の方法については被控訴人に一定の行政裁量の余地はあるとしても、本件の場合は裁量の範囲の明らかな逸脱がある。そうでなくても、」と訂正する。
第三理由
一 当裁判所は、控訴人の本件請求は理由がないと判断するが、その理由は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決事実及び理由欄第三(争点に対する判断)記載のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決六一頁八行目の「相続法」とあるのを「相続税法」と訂正し、同頁九行目の「規定・制度であり、」とある次に「両規定が互いに連携しながら納税者に物納する権利又は措置法三九条一項の適用を受ける権利を付与しているものとはいえず、」を付加する。
2 原判決六八頁二行目から三行目にかけて「右措置を怠った違法がある」とある次に「、本件土地について関東財務局横浜財務事務所がした程度の判断をするについて二年以上の期間を要したのは物納適格性審査の方法についての裁量の逸脱がある」と、同六九頁二行目の次に「本件の場合、本件土地の物納適格性の審査をして、収納不適格である旨の通知をするまでに、二年を超える期間を要したことはその判断の内容に照らし長いとの感じは否定できないが、裁量権の逸脱として違法ということはできない。」と、それぞれ付加する。
二 よって、原判決は正当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法三〇二条一項、六七条、六一条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 矢崎秀一 裁判官 西田美昭 裁判官 榮春彦)